永井優香選手には、これまで数回インタビューをさせていただいてきました。

最後のインタビューは、2016年の夏。(『フィギュアスケートLife』Vol.7参照)
その時印象的だったのは、「スケートは大事で一番大切にしているけど、それだけじゃない。だから、毎日いろいろ考えています」というお話でした。

その後スタートした昨シーズンの様子を見ながら、「受験の話をしていたけど、大学はどうなったかな」とか、「今どんなことを考えているのかな」とか、ずっと思っていました。
何かの情報で早稲田大学への進学が決まったと知ってほっとしたのですが、今度は、「大学1年生になった彼女は、スケートをどんな風に考えているのかな」と思うようになりました。

そんな時間を経た12月の初め、永井選手と、大学の授業の後にお会いすることに。
「こんにちは」と待ち合わせ場所に現れた彼女はにこやかで元気そうで、「とにかくよかった」というのがこの日の最初の印象でした。


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■いろいろなことのあった昨シーズン

「去年(2016年)のインタビューは、夏でしたよね。あの時も少しお話したと思うんですけど、あの前にあった(フィギュアスケートでの)推薦入学のお話、断ってしまっていたんですよね。みんな勉強したくて勉強して大学に入っているので、推薦で入ってしまっていいのかな、と考えて。なのでインタビューの頃は、練習の合間に、塾にも通っていました。結構一生懸命やる塾だったので、パワーポイントでプレゼン資料を作ったりとか大変だったんです。でも、いろいろ吸収できてよかったと思っています。

 9月から11月まで、AO入試で大学を4つ受けました。グランプリの1週間前に試験があったりしたので、スケートの練習のウォーミングアップをしながら勉強したりしていました(笑)。今考えると、病んでたというか、自分できつきつにしてしまっていたと思います。

 同じ時期に、(関徳武)先生が(家庭の事情等で)バンクーバーに行くということを聞いて、わけがわからなくなったり。でも受験のことでも頭がいっぱいだったので、『まずは受験が終わるまで、(先生のことは)考えずに行こう』と思うようにしていました。あの時は、自分が弱いだけだと思っていたけど、今考えたら、『きついわ!』って思いますね(笑)」



■ジャンプについて

 去年の夏のインタビューの際に、ルッツとフリップを直していた永井選手。2014-15シーズン頃からその2つのジャンプに違和感があり、勢いで跳べてしまっていたけれど、直したいと思っていたから、と言っていました。

「昨シーズンは、ジャンプはパンク(踏み切っても1回転で身体が開いてしまうこと)しかしなかったですね。スケートカナダのフリーで、回転不足はあったけど一応全部回ったのは、奇跡みたいでした。カナダに行く前はジャンプが怖くて、曲の中でダブルアクセルも跳べなくて、精神的にギリギリすぎて辛かったです。

 昔から怖がりだったので、ジャンプが怖いことはよくあったんです。最初にジャンプが怖くてどうしようって思ったのは、中学1年の全日本ノービス選手権の前でした。ルッツとフリップの3回転の練習をすることで、2回転がわからなくなってしまったので。でもずっと(腕をぎゅっと)締めていたら3回転回れて、本番も割とまとまったから3位をとれました。結果的には、全部のジャンプを3回転でまとめた初めてのプログラムになったんです(笑)。でも2回転(ルッツとフリップ)は、それから半年以上跳べなかったです。今は跳べるようになりましたけど、昔のようには脚を締めない2回転になりました。
 
 2015-16シーズンは、ジャンプが怖いということはなくて、ただパンクしているだけでした。そのシーズン最後のババリアンオープンで、ショートとフリーの両方を初めてノーミスでできたんですけど、そのあと熱を出したり定期テストがあったりでしばらく休んだんですね。その後、スケート靴を軽いものに変えてからあまり跳べなくなりました。『休んでいたから仕方ないな』と思っていたけど、でも一向に跳べずに、夏にはボロボロになっていて。(その1年後くらいの)今年の5月くらいにスケート靴を変えた時に、重いものに戻したらトウを突けるようになったので、もしかしたら、靴も関係していたのかなとは思います。そう思いたいのかもしれないけれど」


 違和感があったのはルッツとフリップだったけれど、それが次第にジャンプ全体に影響していき、パンクするジャンプが増えたそう。そんな状況だったけれど、エントリーされていたグランプリシリーズの2大会が迫ってくる……昨シーズンは、そんな日々だったといいます。

「どんどん下手になるのに、あんなにいい試合に出してもらってごめんなさいと思って、負の連鎖のような感じでした。ジャンプを怖いと思うと、跳ぶ前に体が固まってしまって、足が出てこないんです。2回転も跳べなくなっちゃうときがあります。昨季はずっとジャンプが怖くて、怖いけどやらなきゃいけないからトライして、でも怖くてやめて、みたいなのを続けていたら、身体は使ってないけど精神的に疲れてしまって。そんなことを繰り返していたからイップスみたいな感じで悪くなっちゃったんじゃないかと思います。昔は、怖くても気合いで締められてたんですけど、今は怖くなるとまったく締められなくなっちゃっています。怖いって思うと、パニックになって苦しくなるから、重症だと思います。

 実際に跳べるかどうかも、氷に乗らないとわからないんですね。身体が重くても跳べる日は跳べるし、跳べそうだと思っても跳べないこともある。だから跳べない時はぱっとやめた方がいいのかなって、最近は思っています。今までは、『やらなきゃ』って思っていたけど、自分が一番いいと思う方法でやったほうが、自分で責任もとれるし。コンスタントに跳べていた時期もあったので、どうしたらあの状態に戻るのかと考えたら、練習量と気持ちかなと。コンスタントに跳べていたころは、気持ちも前に向かっていたんですよね。いろいろかみあわないとうまく行かないんだろうな、と。今は、試行錯誤みたいな感じです。

 今年、5年日記を買って、毎日、スケートも含めた全体的なことを書いています。それに、夏季ジュニアがよかったので、そのときの気持ちを残しておこうと思って、スケート日記もつけるようになりました。『今日はこれに気をつけたら跳べた』とか『今日はめちゃくちゃ跳べなかった』とか、寝る前に軽く書いているんですけど、記録するのって大事だなって。日記とか昔の動画とかを見たりすると、『そういえばこういう気持ちだったな』とか『こういう風にやっていたなあ』とか思うし、『ジャンプのここに気をつけた』とかって書いてあったのを読んだ時にちょっとやってみたら跳べたこともあったんです。9月くらいからは、手帳にスケートの調子も書いています。あまりにも調子の落差が激しいので記録してみたんですけど、すごくいい日が何日か続いたら、そのあと悪い日が何日か続く、みたいなのが出てきて、面白いです。記録してわかることがあるかなと思って」

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<永井優香選手のプロフィール>
エレガントで、力のあるスケートが魅力的な選手。高校1年生(2014-15シーズン)の時には、初出場の全日本選手権で4位、四大陸選手権で6位となり、高校2年生(2015-16シーズン)で本格的にシニアにデビュー。そのシーズンのスケートカナダでは3位と、表彰台に乗りました。現在は、早稲田大学1年生。スケート部にも所属して、スケートと大学の勉強を両立しています。